桐朋小学校 概要 2020


校風

初めて授業参観したときの話。小学校校庭に入ると元気いっぱい走っている子供達の姿が最初に目に入る。無防備状態での笑い声や走りっぷりはまるでまだ馴らされていない野生の動物のような印象も受けるが、話しかけてみると態度がころっと変わり、礼儀正しく対応をしてくれる。校内で大声ではしゃぎ、走り回っている男子生徒を止めて、道を聞いたことがあるが、今まではしゃいでいた姿は一瞬で消え、たくましく、そして丁寧に道を教える。筆者がきちんと理解したか心配だったらしく、筆者を連れて教室まで案内してくれたのである。
桐朋小学生は遊ぶ時も授業の時も精いっぱい一生懸命に取り組んでいる。自由にのびのびとすることができ、また多様性を認めながら個性も大事にしてくれているので、子供達の目は皆キラキラし、とても楽しそうにしている。保護者の中には近所の人や知り合いが桐朋出身の方も多く、学校生活について聞くと、皆が口を揃えて、「とにかくとても楽しい学校」と言っていたので、どのような学校なのか知りたくなり、子供を受験させたという保護者もいる。卒業生の多くはとにかくとても楽しい小学校だったと思い出すらしい。

そして、桐朋小学校は子供を小さい大人として尊重している。先生方は保護者に子供は「小さい大人」であると伝えている。桐朋小学校を卒業すると男子は国立の桐朋中学校へ女子は仙川の桐朋女子中学校へ進む。国立の桐朋中学校に入学したばかりの中学校1年生の生徒に先生は「君たちを大人として見ているから」と言うらしい。自由にそして自主的に取り組む事を大事にする、また子供の個性を大事にする学校であるため、褒められたくて、努力したり我慢することなく、自分のありのままでいられる学校である。優等生、劣等生というレッテルを張られるのではなく、自分は自分、他人とは違うという考えを持って、きちんと自分と向き合う事ができる成人に育ててくれそうな印象を受ける。

教育

「早く早く」というスピーディーな学習とはほど遠い。覚えるよりは考えさせる教育をする。九九を覚えさせる時も、歌などの色々な工夫をして早く覚えさせる事よりも、九九に隠されている秘密を皆で探ることなどにむしろ時間をじっくりかける。単位を覚えさせる時も、表で覚えさせるのではなく、実際1リットルのバケツに水を汲んで来て、ミリリットルのコップの何杯になるか分けてみるなど、覚えるよりは体を動かし、感覚で単位が分かるようにさせる。覚えてしまうよりは時間はかかるが、脳は活発に動いているに違いない。もちろん、汗だくになりながら友達と協力して水を運んでいる子供たちは笑顔であふれ、目もキラキラさせている。宿題は他の小学校より少ない。宿題は多い日でも集中すれば10分程度で終わるぐらいである。でも、日記や読書の声掛けには厳しい。毎日日記を書かせ、週1の図書の日は図書館で本を選び、毎週、本を1冊以上借りて家で読ませる。バスや電車の中で結構厚目の本を抱えて読んでいる桐朋小学生をよく見かける。在校生にはランドセルの他にショルダーバックを持ち歩いている子が多いが、理由を聞くと、背中にかけるランドセルより、ショルダーバックの方が本の出し入れが簡単だからと言う。つまり、教科書だけではなく、自分が興味を持っている本を常に持ち歩き、時間がある時にさっと取り出し、本を読む習慣が身につくほど、図書のサポートはきっちりされている。

そして、「何もしなくていい時間を持つのが子供の権利である」とも保護者はよく言われる。常に何かをさせるのではなく、子供が何もしないでごろごろしたい時はそうさせるように言われる。ニュートンの万有引力の法則も呆然とする中でひらめいたと言われている。いつも忙しくするのではなく、時にはストップして、頭を空っぽにすることから新しい発想が生まれたり、何かに没頭する充電の時間でもあると考えているのであろう。

新型コロナウィルスで長い休校が続いている時も学校から分厚いドリルのかわりに言葉ビンゴやパズルなど先生たちが考えた遊びのやり方が書いてある手紙が郵便で送られた。例えば、1リットルのペットボトルの水を早く出せる方法を見つける宿題など、勉強と言うより遊びに近い宿題が送られたのである。面白いところはこの宿題をやってもいいけど、自分たちで別のテーマを決めてそれに取り組んでもいいとされている。宿題関連の新しいアイディアが浮かんだらメールでクラスメートと共有する。つまり、勉強は学ぶことではなく、遊びを通して楽しむと言う感覚に近いとしている。

決して急がない、むしろ試行錯誤をしながらゆっくり考え、楽しみながら精いっぱい取り組むことが桐朋の教育である。知識よりは何かに没頭できる力、考える力を6年間教える事を目的にしているような印象を受ける。
しかし、英語、ITにはあまり目を向けていない。3年生から桐朋らしい英語の授業が始まるとはしていても、他の私立小学校と比べるとあまり期待できないのであろう。ITの話はほぼされてなく、プログラミングにも力を入れていない。イー・ラーニング研究所の調べによると、2020年子供にさせたい習い事ランキングに1位が英会話スクール、2位がプログラミング教室とされている。そして、その人気に答えるかのように英語やIT関連の専門教室は増えつつある。この流れからすると、桐朋はかなり時代遅れである教育かもしれない。

半面、もっと深い人間の根っこである、自主性、考える力、人間行動のエネルギーである好奇心、ありのままの自分を認める事のできる力等を教えてくれる場所はなかなかない。そういう意味で、別のところで学ぶことのできない人間の根本的な事を学ぶには桐朋ほどの小学校はないかもしれない。

桐朋小学校のほとんどの学生が桐朋中学校(国立)や桐朋女子中学校(仙川)に進む。国立の桐朋高校は進学校であり、2020年「みんなの高校情報」によると偏差値72を示している。2019年6月の森上教育研究所は中高一貫校6年間で子供の学歴を伸ばして難関国立大に入った学校ランキングに世田谷学園に続いて桐朋中学校が2位と発表されたのである。小学校の時に沢山遊んで、それを学びに繋げて、6年間何かに没頭する心と考える力を育んだ結果、勉強が急に難しくなる中学校以降の学力が伸びる秘訣になったのかもしれない。

「天才は努力する者に勝てず、努力する者は楽しむ者に勝てない」と言う言葉がある。そういった意味で、桐朋の遊びから学びを繋げている教育方針はとても魅力的である。一見桐朋の教育は英語とITに力を入れていないので遅れている教育の様に見える。しかし、これからの社会は無味乾燥なことに努力する人より、楽しみながら働くことができ、沢山のユニークな発想ができる人材を必要としている。桐朋の自由を大事にする教育から生まれる子供の自主性、そして多様性を認める教育から大事にされる子供の個性、決して急がない教育から生まれる遊び心と好奇心と考える力はこれからの時代に社会が求める人材を育んでいるという意味でむしろ進んでいる教育かもしれない。他の私立小学校と比べ、英語とITにはあまり力を入れていないが、知識を詰め込むよりは考える力、自分たちの宿題も与えられた物をするのではなく、自分たちで工夫して宿題のアイディアまで共有し、自由に意見を頻繁に発表できる教室の雰囲気は日本の伝統的教育とはかけ離れた、むしろとてもグローバル化された教育にさえ見える。

2020年5月20日 在校生保護者 記

〈以下GLE事務局注記〉

上記小学校概要はGLEの某クルーが記したものです。GLEとはGlobal Leader Educationの略称です。GLEは子育て・教育をグローバルスタンダードで考え、その中での学校と家庭の役割を考えます。日本の教育システムでその頂点に上り詰めてもグローバルに活躍できる人材とはならないのです。某クルーの一族には子育て・教育に関して確としたヴィジョンがあり、某クルーの兄もアメリカの名門大学院を卒業しシリコンバレーのGAFAの一角で大活躍しています。もちろん、某クルーも英語力やITのスキルが必要なことは十分承知しています。英語は幼児のときからネイティブに学ばせ、小学校に入ってからは、アメリカの小学校で学ぶ内容をネイティブが英語で教えるスクールに週5日通わせています。つまり、日本の小学校で学ぶレベル以上のスキルが必要と考えているのです。そのほか、クリティカルシンキングを養うために、ユダヤ式対話法(ハブルタ)を活用した読書を家庭で実践しています。ITに関しても自宅で色々なプログラミングを体験しています。しかし、この時期に何よりも大切なことは「人間の成長の根本を築くこと」であるとの考えです。それを桐朋の教育に託しているのです。その意味では、桐朋の教育は福沢諭吉の『まずは獣心をなして』の一節を彷彿させます。本物のグローバルスタンダードの教育を授けることは、学校任せでは達成できないのです。

2020年5月20日 GLE幼・小受験チーム

 

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