玉川学園小学部 概要 2020


90余年の歴史を誇る伝統校でありながら、ともかく先進的、革新的。斬新な英語教育、積極的な延長プログラムなど、時代の要請に極めて敏感に、常に向上に向けて変革し続けている。

♪BLES

2016年度より、IB(International Baccalaureate)プログラムの強化のため、BLES(Bilingual Elementary School)をスタートした。IB:PYP(Primary Years Programme)ではなく、6年次よりのIB:MYP(Middle Years Programme)へつなぐ過程となる。以降高校3年生まではIB:MYP・DPが用意されている。開始5年を迎え、大部浸透してきた印象だ。

♪JPとEP

小学校はJP(Japanese Predominant)とEP(English Predominant)と2つ、JPは主に日本語で、EPは主に英語で学ぶ。JPも週5時間の英語を実施。EPではIBを目指して学習言語を英語にし、英語の授業は英語のみ、国語と社会は日本語、それ以外の科目はバイリンガル指導。英語のみの環境で英語漬けにするイマージョン教育とは違い、日本語と英語の両方の言語技術(Language Arts)を身に付けさせる点で、インターナショナルスクールと異なる。もちろん、文科省指導要領に則り、日本の教科書に沿って授業を展開する。6年生以降はIBカリキュラムで学ぶ。

♪EPについて

何はともあれ気になるのは、あまりに斬新なBLES(EP)である。入試で英語力は全く問われない。つまり、全く英語に触れたことのない子どもが、ある日突然「英語だけの学校生活」に放り込まれることもあるのだ。スタート当初は、完全に英語が頭上を通り過ぎ、完全なるドロップアウトが教室内に散見された。言葉が分からないと当然人は無口になるが、それが取り組み事態への消極性となって表れていた。

ちなみに、海外駐在員の子どもが現地の学校へ入学する場合も、「ある日突然英語だけ」は同じである。しかし、子どもなりにも、その国、その言語を受け入れない限りもうどうにもならないのだという覚悟が生まれ、ドロップアウト現象は起こらないという。日本国内の場合は、「近所の〇〇ちゃんも、親戚の△△くんも、普通に日本語で楽しく学校に通っている。なぜ自分だけ???」という感情が沸き上がる。この時点で即アウト、復帰はむずかしい。そうならないように、親が先回りをして十二分なサポートをするしかないと心得る必要がある。

学校側の経験値の向上、家庭側の受け止める意識の向上の影響か、昨年の授業見学では随分と「授業らしい」ものとなっており、成果が明らかに目に見え始めている。2年生にもなれば、全員が多少なりとも言語を理解し、大意を掴む様子が伺えた。英語に触れる量としては他校に比し圧倒的だ。現在はまだモルモット感が残るが、年々向上している兆しは十分に見えるので、これだけの大改革、長い目で期待したい。

♪インターとEPの違い

<上級校の受け入れ問題>
もともとインターは各校で国籍(アジア、ヨーロッパ、アメリカ等)あるいは親の使用言語の割合を決めており、日本人両親枠は0%?30%程度の範囲で設定されている。小学校以降はインターの絶対数が少なくなり、必然的に日本人受け入れ数が減少する。人気の西町インターナショナルスクールや東京インターナショナルスクール(TIS)は、中学までしかない。

インターからの日本の中学校への受け入れは、基本的にはできない。文部科学省HPには、「一条校でないインターナショナルスクールの小学部を終えた者が中学校から一条校への入学を希望してきても認められないこととなります。インターナショナルスクールの中学部の途中で我が国の中学校へ編入学を希望する場合も同様です。」と記載されている。日本の学校へ入る資格そのものがないということ。また、何とか日本の学校に滑り込んだとしても、結局日本語力が及ばす、授業についていけるかどうかが、次の大きな課題となる。

他の選択肢は2つ。
①高校がある格下のインターへ編入する
②海外のボーディングスクールへ進学する

中学のない西町やTISでは、卒業生の約3割が海外のボーディングスクールへ進学する。その学費の相場は年間800万~1000万、人気と言われるスイスのChateau du Roseyは年間1,440万。

その点、玉川は学園全体のスケールメリットで先のレールがきちんと整備されており、かつ一条校だ。国際色の点では現状インターに劣るものの、インターを選択した場合に生じる進学時の選択肢の狭さといった非常に大きな魅力と言える。

♪種々雑多な英語

外国籍の先生の数は、教員全体の3分の1を超えた。国籍や人種は様々だ。ただ、だからこそ子どもたちは、「きれいなブリティッシュイングリッシュでなければ理解できない」のではなく、どんな発音であっても「英語」という括りで分け隔てなく、自然に受け入れている。本当の国際社会を考えたとき、当然多様性にあふれている。美しい英語にこだわって温室栽培されるよりもずっと恵まれた環境と言えるだろう。また、外国籍と思われる父母や、日本人に見えても英語で会話をしている家庭も多く見受ける。ハーフの子ども、外国の名前の子どももクラスに必ずいる。そういった意味でもBLESの需要はあるだろう。

♪問題点

都心から離れた立地、高額な授業料も相まり、現状はまだ生徒集めに四苦八苦で、定員合わせの子どもが入学しているのも事実。学校の高い志が、空回りしているようにも見える。BLESがもう少し浸透し、成果を出すようになれば倍率の上昇も見込め、生徒の底上げが期待できるだろう。倍率について学校に質問したところ、「倍率は上がっていない。BLESに興味はあっても、なかなか選ぶ段になっていない。保護者は冷静だ」とお話されていたが、若干上向きの兆しだ。定員割れの私立小学校が増える中、玉川は辛うじてクラス人数を確保している。

♪川があれば渡るのが玉川

BLESスタート当初は「またトップが変なこと言い出しちゃって」といった現場の戸惑いが確かに感じられた。先生方から伺った直接のお言葉の中で、大変印象に残っているものがある。「川があれば渡るのが玉川。深いかもしれませんよ~、と言っても渡る。それで時々溺れている」。「今は小原学園長が『「Go to bilingual』と言って進んでいる」、「これからのAI時代、機械が翻訳をするのに、なぜここまで英語をやらなくてはならないのか」。小原学園長が全決定権を持つ。

そうは言っても、否が応にも動き出してしまい、子どもたちが飲み込まれたとなると、先生方ももうやるしかない。少しでも良くしていこうという足並みが、ここに来て揃ったように感じられる。試行錯誤を繰り返しながらも、日進月歩の様子が如実に伺える。子どもたち自身も、少しずつではあるが成果を見せ始めている。そうなれば、よい生徒を集めることにつながり、結果がついてくるはず。今後は加速度的によい方向へ向かうのではないか。

今はまだ大改革が始まったばかりの黎明期。前例のない、地図も道もないところを、「まずやってみよう」という精神と実行力を持って取り組んでいる。小学校という井の中で情報過疎となる学校が目立つ中、時代の流れを捉えて実際に動き出し、挑戦している玉川学園。今後の発展、飛躍に期待したい。

2020年5月11日 GLE幼・小受験チーム

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