体験不足をどのように補うか
新型コロナウィルスの拡散防止のため多くの教室もお休みになっています。むしろ今後大変な状況に向かっていると思います。いろいろな場面でお友達との関わりが薄くなることは否めません。
特に4小学校受験では「行動観察」対策を心配されている方もいらっしゃるようです。今回は心理学の遊戯療法で使われている遊戯を参考にして家庭で出来る遊びを紹介します。従来から遊戯療法で使われている遊戯が小学校受験の行動観察に似ていると言われていました。家庭で類似のゲームを経験していれば実践のときに役に立つと思います。
しかしながら、その目的は心理学の遊戯療法とは同じではありませんので誤解されないようにお願いします。
1.オニは外
用意するもの:新聞紙ボール(新聞紙を丸めて野球ボールの大きさに固めたもの)
一戸建ての場合少し弾けるぐらいの柔らかいボールを使ったらもっと楽しい。
遊び方:
- 新聞紙を丸めて新聞紙ボールを作る。
- 壁やドアなどの固い所に赤オニ、青オニ、黄オニ、の3つを3枚の紙にひとつずつ紙に
書いて3枚がばらばらになるように貼る。 - 「~~は外」と言いながら新聞ボールを投げる。
- 交互に投げて、共通の敵を倒す。
類似課題は、小学校受験の行動観察考査でも頻出です。2019年度入試の学習院初等科は「おばけ」に向かって投げる、同じく2019年度入試の慶應義塾横浜初等部では「オニ(赤オニ、青オニ、黄オニ)」に向かって玉を投げる課題が出題されています。皆の敵を倒すようなルールに変えて、楽しいゲームとしてチャレンジしてみましょう。学習院では「玉は1回に2個」、「アンダースローで投げる」、「タイコが鳴ったらやめる」、慶應横浜では「ラインから出ない」、「赤オニ→青オニ→黄オニの順に倒す」などの約束がありましたので、参考にしてください。
2.感情ボーリング
用意するもの:ペットボトル5本、新聞紙ボール
遊び方:
- 新聞紙を丸めてボーリングボールの大きさにする。
- ペットボトルをボーリングのピンの様に並べる。
- 新聞紙ボールでピンを倒して遊ぶ。
ペットボトルボーリングも、よく小学校受験で行われます。女子校によくある自由遊びですが、横浜雙葉小学校や雙葉小学校ではボーリングの用意があります。また、考査は狭い場所(教室)で複数組同時に行われることが多いので、その中での「蹴る」という行為は周囲へ迷惑を掛けかねず、場をわきまえない行為です。手で転がす(あるいは投げる)方がベターだと判断できる力が合否を分けます。小学校受験対策としては、ペットボトルは10本とし、ゴムボールやドッジボールなどでもやってみましょう。投げた人がピンを直すなどの約束をいくつか決め、合計得点を競うと楽しく取り組めます。
3.風船でしりとり
用意するもの:風船
遊び方:
- 風船に空気を入れる。
- ジャンケンをして勝った人から風船を飛ばしながら言葉を言う。
- 負けた人は勝った人が飛ばしてきた風船を返しながらしりとりをする。
- どちらかが、しりとりに失敗しても、風船を落としてもゲームが一端終了される。
しりとりだけでなく、「あ」のつくもの(同頭語や同尾語)、春のもの(季節)、野菜や果物の名前、動物や魚、鳥の名前、卵生胎生、台所用品や大工道具、1本2本と数えるもの(助数詞)、磁石につくもの、木でできているもの(素材)など、工夫次第で楽しみながら語彙や知識が増やせます。
4.オリジナルの絵ストーリ
用意するもの:白い画用紙一枚、色鉛筆
遊び方:
- まず、親が画用紙に絵を描きながら話をします。
例:「昔々おじいさんとおばあさんが住んでいました。」と言いながら、
家を描いたり、おじいさんとおばあさんの絵を描く。 - 親が書いた絵を見ながら話の続きを作ります。
(絵本ではないので、書くのは絵だけです。話はお口で話ながら楽しく書きましょう。)
絵を描きながら話の続きを作る。
例:「おじいさんの髭はとても長くて、おじいさんは歩くのに苦労しました。」
親が描いたおじいさんの絵に髭を加える。 - 子供が描いた絵を見ながら続きの話を親が作りながらそれに合う絵を加える。
1. から3. をずっと繰り返します。2番目に絵を描きだした人が話を終えるようにしましょう。お話が終わった後は別の終わり方があったか、あったらどのような終わり方もあったか?おじいさんはこの時どのように思ったか?もし、あなたがこのおじいさんだったらどうしたか?などという質問を子供と親が互いに質問し、話し合う事をお勧めします。少し怖い話になっても責めずにそのまま子供の感情を受け止めてあげましょう。そして、感情に名前を付けてあげるのも良いです。例:「怖いよね。」、「それは嫌だね」など。
絵画は、慶應幼稚舎、早実を始め、難関校での出題が目立ちます。絵画がものすごく好きで上手であればもちろんそれに越したことはありませんが、小学校受験での観点は、その子のこれまでの豊富な経験や発想力、普段の丁寧で愛情にあふれた生活の様子など、人間性の部分を見ることが重視されます。また、話が終わった後の親子での掘り下げは、子どもの思考力や分析力を高めます。この力は最近難関校で顕著に試されている力で、私どもが推奨しているハブルタ式教育法に通じるものです。「あなたは誰ですか?」、「どんな人ですか?」、「あなたはどう思いますか?」、「あなたならどうしますか?」。昨今のこういった考査での問いに余裕を持って対応できるよう、親子の会話を充実させることが何より大切です。
筆記具はここでは色鉛筆となっていますが、小学校受験ではクレヨンを使用する学校が多く、中にはクーピーの学校(東洋英和女学院や田園調布雙葉小学校など)。東京女学館小学校は絵画はクレヨンだが運筆、色塗りはクーピー)もあるので、志望校の筆記具を確認しておきましょう。とくにクーピーは作業に時間が掛かり、丁寧さが目立つので、練習が必要です。
5.親子でお菓子
用意するもの:子供が普段良く食べるお菓子。
二人もしくはそれ以上の人数が一人3回以上は食べられる量のお菓子を用意する。
10回以上回るぐらいの量は控える。
遊び方:
- 年が上の人から下の人に食べさせる。
- お菓子を食べさせながら相手が頑張った事を一つ言う。
例:「ボールがなかなか当たらなかったのにめげずに挑戦していたね。」
普段思っていた感謝の言葉を言ってもいい。
例:「いつもおいしいお弁当を作ってくれてありがとう。」、
「ママが忙しい時に待っていてくれてありがとう。」 - 互いに3回づつ言える事が目標だが、お互いが合意していれば、
お菓子がなくなるまで、続けても良い。
受験指導をする中、お母さま方によく申し上げることの一つに「お子さんのよいところを10個書いてください」というものがあります。受験準備期のお母さま方は、真剣に取り組むあまり子どものできないところばかり目が行きがちで、長所を見失ってしまいます。「いいところなんてない」とまでおっしゃいます。えくぼまであばたになってしまうのです。そうなれば親子関係は下降の一途。考査当日に突然「愛情あふれるあたたかな家庭」を演出しようとも、学校側からは簡単に見透かされてしまいます。昨今、子どものペーパーよりも面接で垣間見える親子関係を優先して合否判断をする傾向が顕著です。この課題は、子どもに感謝の心を育むのみならず、お母さま方の健全な精神のためにも是非とも生活に取り入れていただきたいと願います。おやつ、ということに抵抗があれば、おはじきのやり取りやボール渡し、さきほどのように風船を使ったりして工夫をして取り組んでみましょう。
6.希望の木を描こう
用意するもの:大きい白い紙(子どもが欲しい木の大きさぐらいで良い。
カレンダーの裏でもよい。)、緑や黄緑の色紙を多めに用意。
遊び方:
- 大きい紙に葉っぱのない木を書く。後で葉っぱを色紙で貼るので、枝も描くと良い。
- 緑と黄緑の色紙を葉っぱの形に切る。
- 葉っぱの形の色紙に「感情や願い」を書いて木の枝に貼る。
- 木が書いてある大きい紙を家の子どもの手に届くところに貼って、感情や願いを書いて貼るのも良い。色紙の葉っぱも子供がすぐ届くところに置くと良い。
2016年度の田園調布雙葉小学校の行動観察で、「不思議な木」という集団絵画が出題されています。不思議な実が成る木という設定で、形式的に類似しています。受験考査では、「消えて欲しい否定的な感情や願い」ではなく、「感謝」、「夢」、「嬉しかったこと」、「楽しかったこと」等の肯定的な感情に置き換えて取り組むとよいでしょう。
以上
2020年4月6日
GLE(Global Leader Education) 幼小受験担当