「入試の変遷」
ここでは、これまでの小学校入試の移り変わりを振り返ってみます。それだけでも、多くの問題点が浮き彫りになります。各々の詳細については、次回以降の各論でお伝えしてまいります。
1)ペーパー全盛期
私が小学校受験に携わるようになり、早25年近い年月が経過しました。当初を思い起こすと、ペーパーはとても難しく、子どもたちは親の背丈ほど積み上げられたペーパーと、来る日も来る日も奮闘していました。しかもそれは、今見るととてつもなく難しく、不必要にひねられた問題ばかりでした。
今ではノンペーパーで楽しい入試を行う学校の代表格のひとつに、立教小学校があります。その立教が、当時は大変に難しいペーパーを大量に課していたことをご存知の方がいらっしゃるでしょうか。ある時、当時の立教小学校の校長先生が、某幼児教室の立教クラスを見学に行かれたそうです。そこでは、量の多いペーパーに対応するため、子どもたちが「ペーパーを速くめくる」練習が行われていました。それをご覧になった校長先生は、即刻、「ペーパーを廃止しよう」とご決断された、そういう話を伺っています。その頃は、「立教に入れたければ、右手をしばれ」という言い伝えが真しとやかにありました。左綴じのペーパーを少しでも速くめくるには、左手が自由に使える方が有利だという意味で語り継がれていたのです。一生の人格や方向性を決める本当に大切な幼児期に、少なくとも「ペーパーを速くめくる練習」はあまりにも必要なく、それは立教の求める教育、子ども像と結びつかない、という校長先生のご判断ということになります。
2)ペーパーから行動観察へ
以降、ペーパーに替わり、行動観察がもてはやされる時代になりました。行動観察の発祥は、白百合学園小学校と言われます。考査の待ち時間、在校生のお姉さま方が子どもたちと一緒に遊ぶ時間が設けられていました。幼稚園に通う子どもたちが退屈しないようにとのご配慮からです。しかし、その際の幼児の様子の報告と、入学してからの児童の当たりはずれというものが、正規の入試結果よりも子どもを判断する上で役に立つ情報となった。そのことから、ペーパーに替わる存在として、一気に行動観察が市民権を得ることとなりました。
行動観察の観点は、昨今大きく変わってきています。学校側にとって課題も多くなり、合否判定基準として混迷しているのが現状です。そのあたりの詳細は、別途各論にてお伝えしてまいります。
簡単に申し上げると、一見子どもたちを測るのに素晴らしく思えた行動観察ですが、幼児教室がペーパーをトレーニングしたように、行動観察もまた幼児教室によるトレーニング化が進んだことが原因です。子どもたちのその言動が、その子どもの持つ「本性なのか」それとも「トレーニングされた芝居なのか」、それだけを見極めるだけ場となってしまっているのです。もはや、合否判断基準としての割合はさほど大きくないと言えるでしょう。
3)面接重視
ペーパーも行動観察も、幼児教室の「均一化する」ためだけのトレーニングの成果により、学校が求める子どもを選別する術としてふさわしいものとなってしまった。とすれば、当然ながら残るは「面接」しか残っていません。それこそが最重要視される時代となりつつあります。面接の昨今の変化は著しく、その重要性は際立ってきているにもかかわらず、気づきもしない幼児教室、講師が多い。それが現実です。面接で学校が何を見ているか、それにも気づいていないように思えてなりません。
面接対策がこれほどまでに合否決定に最重要項目となっていることにも気づきもせず、一般の幼児教室ではあまりに対応が遅れていると言わざるをえません。最新の情報不足、分析が徹底されていないことに加え、面接という極めて深い学校情報、教育知識が求められるマターに対し、的確な指導ができるほどの指導者がいない、それが幼児教室の抱える実情であるからです。
大手幼児教室では、昨日一昨日に入社し、マニュアルだけを頼りに一方的な授業をしているだけの講師がうんざりするほどいるのをこれまで多く見てきました。だから授業を保護者に公開できないのです。そんな人材に、大切な子どもの人生を預けようと思えますか?この点については、保護者側がしっかりとした審美眼を持ち、判断、選択しなくてはならなりません。これこそが、既存の幼児教室の大きなウィークポイントであるとお伝えしておきます。
私たち「子育てを考えるひろば」では、そういったオープンになりにくい(幼児教室が隠したい)問題を解決したい、そのためにこのサイトを立ち上げました。幼児教室を運営し、実際に携わっているからこそ、本当のことが見えているのです。私たちはそういったご家庭にとっての目に見えにくい不利益を克服し、ただ1回のチャンスにおいて「合格」を勝ち取っていただけるためのお手伝いをさせていただきたい、そう願っております。