小学校入試で求められるもの(2)


「2019年度入試で求められるもの」
2019年度入試は、短期間で局所的に比較した場合でしょうか、「変化がない」というのが各幼児教室のご見解のようですが、よく見ると大きく動いています。そういった動きを見逃してしまっては、次の入試の対策として、見当違いな方向へ進んでしまいかねません。ここでは、今年(2019年度入試)どんな問題が出題され、それは学校側のどういった意図で、さらには、来年以降、皆様の入試にどういった影響が考えられるのかをお伝えしてまいります。

2019年度の入試を一言で申し上げるとすれば、「ペーパー2、行動観察1、面接3」といった重要度比率といったところでしょうか。

1)ペーパー重視
「ペーパー重視??」と思われるかもしれません。皆さんがお通いの教室の講師たちは、異口同音に「今年はペーパーが簡単だった」とおっしゃったのではないかと推察しているからです。果たして本当にそうでしょうか。

確かに、お話の記憶の要素が減った、数の問題の数量も大きなものは求められなかった、図形や回転の難問もなかった(成蹊女子の図形、雙葉の回転を除く)、といった印象があります。どこの学校でどんな問題が出題されたか、といいった表面的事実だけしか考えていないようでは、「ペーパーが簡単になった」という見解にもなることは容易に想像できます。しかし、なぜこの問題が出題されたのか、学校は何が見たかったか、今後試験はどういう方向に動いてくるのか、といったことをきちんと分析してみると、それは決して、「ペーパーが簡単になった」わけではないし、学校の求めるものが見えてくる。そういった視点で入試を考えなくてはなりません。

2)行動観察の観点の変化
行動観察の授業や模試、どういった観点でしょう?「どうする?」、「いいよ」、「そうだね」。そんな言葉を幼児教室で教えられるのではないでしょうか。でもそれは、本当に学校が求めている言葉なのでしょうか?

行動観察考査が始まった当初は、学校側も「いいよ」と言える子、つまり「お山の大将」だけではなく、「譲れる子」がほしい、そういった観点を持っていたことも事実でしょう。でも、今となってはみんな幼児教室で教え込まれ、全員が「どうする?」、「いいよ」です。学校側として、それで子どもが判断できるでしょうか?

行きつくところ、現在では子どもの言葉が「その子の本当の言葉か」、それとも幼児居室で教え込まれた「芝居」なのか。その識別だけに行動観察考査が行われている、嘘か本当かを見抜くだけの場となっているのです。それが、小学校受験の真実です。それだけで学校側は大切な合格者を決めるでしょうか?答えは間違いなく「NO」ということになります。

行動観察は、受験番号順でグループになることが多く、グループによる当たりはずれが子どもの人生を左右することもある、それは真実です。今では掲示での合格発表は少なくなりましたが、掲示で見ると「~番から~番まで、ごっそり落ちている」という状況を目の当たりにします。「何かあった」のです。一人が原因でグループ全員が不合格となることもある、小学校受験はそういう入試です。

それが「何か」はそれぞれですが、学校側にとっての「何か」があったときは全員不合格になることもある。「一人いけない子がいた」、「一人が何かをした」だけ。もはや「運」としか言いようがありません。しかし、逆に考えてみると、「グループに一人いい子がいた」、それでグループ全員が合格するのか?その前例は知りません。つまり行動観察は、問題行動や問題を起こす子どもを「排除する」場となっているのです。そして、行動観察でだめだった子どもの場合、「何かをしてしまった」ことが大半で、「目立たなかった」と理由だけの一発アウトはありえない。実際、行動観察重視と言われる学校にこそ、大人しくて協調性のある子どもが最近は多く合格しているように感じています。行動観察頼みで合格を手にすることは雲をつかむより難しい。それよりは、より重要視される項目に力を注ぐべきではないでしょうか。入試準備の時間は、あまりにも短いのです。

3)面接最重視
結局のところ、学校側の観点は「作られた行動観察」から、次のステップへ移ることとなります。それは何か。「面接」です。ここ数年、合格を決定づけているのは間違いなく面接です。そして、そのやり方は大きく変動しています。「志望動機は?」、「家庭の教育方針は?」といった、誰でもが答えを用意している質問など、もはや聞かれないのです。

「水槽があったら何を飼いますか?」、「大掃除の役割分担はどうしますか?」。これは実際に、本年度(2019年)に出題された面接での質問です。学校はいったい、ご家庭の何を見ようとしているのでしょう?それは、昨今の考査を分析すれば明白です。とっさに浮き上がる親子関係。母親が「こうでしょ、こうよね」と押し付けてしまったり、子どもがあまりに親の指示待ちであったり、あるいは親の表情におびえていたり。こういった一見些細なことこそが、昨今の小学校受験の合否を分けています。大切にすべきことは何でしょう。今後、できるだけ具体的にお伝えしてまいりたいと願っています。